繋がれた魂
ある日、一人の旅人が魔女のもとを訪れました。
「私はどれだけ歩いても、光の差す場所にたどり着けないのです」
旅人の瞳には、長い旅路の疲れが宿っていました。
魔女は静かに魔法の薬を調合し、旅人に差し出しました。
「これを飲んでごらんなさい」
旅人が薬を飲み干すと、目の前に遠い昔の物語が浮かび上がってきました。

むかしむかし、ある村に夫婦がいました。
妻は夫を捨て、別の男と遠い町へ駆け落ちしていきました。残された夫は、悲しみと怒りに打ち震えました。
やがて、幼い子供が母を求めて家を飛び出し、二度と帰ってきませんでした。
夫の悲しみは、深い深い恨みへと変わりました。
「あの二人を、その血を引く者すべてを、決して許さない」
その恨みは黒い鎖となり、駆け落ちした二人の子孫たちに絡みつきました。不慮の事故、心を病む者、幸せを掴めない者…代々、不幸が続きました。

「これが、あなたの祖先に起きたことです」
魔女は静かに言いました。
旅人は涙を流しました。
「では、私はずっとこの鎖に繋がれたままなのでしょうか」
魔女は首を横に振りました。
「もう一つ、見てほしいものがあります」
魔女がそう言うと、旅人の目の前に別の姿が浮かび上がりました。
あの恨みを抱いた男のそばに、小さな光がありました。母を探して帰らなかった、幼い子供の魂です。
その子供の魂もまた、父の恨みの鎖に繋がれ、安らぐことができずにいたのです。
父が恨めば恨むほど、その鎖は強くなり、子供の魂も一緒に縛られていました。

「恨みは、相手だけを傷つけるのではありません」
魔女は言いました。
「最も愛する者さえも、縛ってしまうのです」
旅人は静かに目を閉じました。
そして、心の中であの男に語りかけました。
「どうか、鎖を解いてください。あなたの愛した子供を、自由にしてあげてください。そうすれば、私たちも自由になれます」

その夜、旅人の夢の中に、あの男が現れました。
男の目には、もう怒りはありませんでした。
そのそばで、幼い子供がお団子と焼き芋を持ってにこやかに微笑んでいました。
朝が来ると、旅人の足取りは軽くなっていました。
光の差す場所へと続く道が、ようやく見え始めていました。

恨みの鎖は、相手だけでなく、自分自身や愛する人をも縛ってしまいます。
でも、その鎖は解くことができます。
あなたの魂にも、光の道が見えますように🌸

